適正な運用続く通信傍受法

公明新聞:2008年2月28日
公明が主導した修正が歯止めに

国会報告で明らか

 「悪法が通っても、言論の自由と民主主義があれば改められる。しかし盗聴は、民主主義を入り口で止める」――これは1999年8月9日、参院法務委員会で犯罪捜査の手段として通信傍受を認める通信傍受法が可決された時の、民主党有力衆院議員の発言だ。

 今月(2月)、政府は8回目となる通信傍受法に基づく国会報告を行ったが、「民主主義を入り口で止める」悪法という批判が誤りであることが改めて確認された。

 昨年(2007年)1年間で全国の警察が行った通信傍受法に基づく電話傍受は7事件、逮捕者数は34人。傍受の数を2000年からの施行8年間で見ると、始めの2年間は0件、残り6年間の合計も29件で、逮捕者数の合計は126人。昨年(2008年)の7件の傍受はすべて暴力団に関連する事案であり、裁判所が発付する通信傍受令状に書かれた罪名はすべて薬物犯罪だった。

 このように通信傍受法は施行以来、薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的犯罪の4類型を対象にするという法の目的の範囲内で、適正に運用されていることが分かる。通信傍受法は、公明党が政府当初案に対する大幅な修正を主導し、与党(当時は自民党自由党)との共同修正を実現させたことによって1999年8月に成立した。この修正によって通信傍受の対象が一般犯罪から4類型に限定され、警察の暴走を許さない内容になった。ところが当時、公明党には「このような修正では全く意味がない」「盗聴国家になる」などとの批判が投げつけられていた。しかし、国会報告によってそうした批判がいかに的外れであったかが証明された形だ。

 通信傍受法は悪質な組織犯罪から国民の生命・生活を守るための重要政策課題であり、本来、意味のない対決でなく、落ち着いた政策論議が必要なテーマだった。しかし、通信傍受法の国会審議が行われた同年の通常国会は、与野党激突のため冷静な論議は置き去りにされ、「盗聴国家になる」「監視国家をめざす法」「権力によるプライバシー侵害」との毒々しい言葉が飛び交っていた。

 「広がる麻薬や組織犯罪とどう戦うのか」という本筋の政策論と真正面から取り組み、その結果、通信傍受法の政府当初案を“換骨奪胎”すると言ってもいい修正案をまとめた公明党に対しても、「突然、反対から賛成に変わった。コウモリ政党だ」「公明の賛成で大政翼賛になった」などと、意図的な批判が浴びせかけられた。

意図的な論議避けよ

 前年98年の通常国会に提出された政府当初案は、広範に通信傍受を認めるなど問題が多かったため、公明党は反対したが、その後、大幅な修正を実現して法律を通した。この公明党の姿勢は、公党として政策論議から逃げない責任ある行動だった。その一方で野党第1党の民主党は、98年12月に与党、公明党とともに修正協議に入りながら、最後は対案も独自の修正案も出さずに「法案阻止」に走った。修正協議に臨んだということは、通信傍受の必要性を認識したことにほかならない。それを一転させたのだから、民主党は政策論議より政局を優先したと言われてもしかたがないのではないか。

 政策を論議する場合、政治家が意図的に過度の単純化や現実無視の議論をすることは、正確な情報を求めている国民に対し不誠実な行為になる。この点を忘れてはならないだろう。